取材・文:EatMedia編集部
食品ロス削減推進法の施行から5年。自治体による条例化が進み、飲食店への影響が拡大しています。義務化される取り組みと、実践的な削減方法を解説します。
食品ロス削減推進法とは
2019年10月に施行された法律で、食品ロスの削減を「国民運動」として推進することを目的としています。
飲食店に求められること
- 食品ロスの削減に向けた自主的な取り組み
- 消費者への啓発活動
- 自治体の施策への協力義務
自治体の条例化が加速
東京都「食品ロス削減推進条例」
2024年4月施行。以下の取り組みが努力義務化されました。
- 食べ残し削減のための注文時の声掛け
- 小盛りメニューの設定
- **持ち帰り(ドギーバッグ)**の推奨
京都市の先進事例
**「30・10(さんまる・いちまる)運動」**を推進。
- 宴会の最初の30分と最後の10分は着席して料理を楽しむ
- 参加店舗には認定ステッカーを配布
効果: 参加店舗の食べ残し量が平均 32%削減
飲食店の食品ロス実態
ロス率の業態別データ
| 業態 | 食品ロス率 | 主な廃棄理由 |
|---|---|---|
| ファミレス | 3.8% | 食べ残し(60%) |
| 居酒屋 | 7.2% | 食べ残し(75%) |
| ホテル宴会 | 12.5% | 作りすぎ(55%) |
| ビュッフェ | 15.3% | 提供期限切れ(68%) |
金額換算すると
年商5,000万円の居酒屋の場合:
食品ロス額:約360万円/年
「ロスを半減できれば、年間180万円のコスト削減になる」(飲食コンサルタント)
効果的な削減方法
1. 仕入れの最適化
ABC分析の活用
食材を売上貢献度で分類し、発注量を調整。
Aランク(上位20%): 毎日発注
Bランク(中位30%): 2〜3日ごと
Cランク(下位50%): 週1回
効果事例
都内イタリアン(30席)
- 導入前のロス率:5.2%
- 導入後:2.8%
- 削減額:年間約120万円
2. メニュー設計の工夫
ハーフサイズの設定
- 通常の60%の量で価格は70%
- 女性客・高齢者の利用増加
- 複数品注文による客単価向上
食材の使い回し
1つの食材を複数メニューで活用。
例:鶏もも肉
- ランチ:親子丼
- ディナー:グリルチキン
- まかない:鶏の唐揚げ
3. 適量注文の促進
注文時の声掛け
「当店は一品のボリュームがございます。 |
導入店舗の食べ残し削減率:平均28%
POPの活用
- 「食べきれる量のご注文を」
- 「残したら持ち帰りOK」
4. デジタル技術の活用
AI需要予測システム
過去の売上データと天気・イベント情報を分析。
導入効果(チェーン店実績):
- 廃棄率:4.2% → 1.8%
- 食材発注精度:87% → 95%
フードシェアリングアプリ
余剰食材を割引価格で販売できるアプリが普及。
主要サービス:
- TABETE(レストラン向け)
- Reduce GO(コンビニ・飲食店)
- Food Passport(サブスク型)
持ち帰り対応のポイント
食中毒リスクへの対策
厚生労働省のガイドラインに基づく対応が必須。
提供時の注意事項
- 保冷剤の提供
- 持ち帰り時間の確認(2時間以内推奨)
- 加熱料理の優先
- 免責事項の説明
専用容器の準備
- 密閉性の高い容器
- 電子レンジ対応
- 汁漏れ防止構造
コスト: 1個30円〜50円
補助金・助成制度
食品ロス削減設備導入補助金
自治体独自の補助制度が拡大中。
東京都の例:
- 対象:真空包装機、急速冷凍機など
- 補助率:2/3以内
- 上限額:100万円
認証制度のメリット
「食べきり協力店」認定制度
メリット:
- 自治体HPでの掲載
- 認定ステッカーの配布
- 環境意識の高い顧客の来店増加
認定店舗数の推移:
- 2022年:全国約8,500店
- 2024年:約13,200店
SDGsとの関連
食品ロス削減は**SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」**に直結。
企業イメージの向上
消費者調査の結果:
- 「食品ロス対策をしている店を選ぶ」:68.3%
- 「多少高くても選ぶ」:42.1%
成功事例
すかいらーくグループ
- AIによる需要予測導入
- 食品ロス率:2.1%(業界平均の半分以下)
- 年間約15億円のコスト削減
個人経営の居酒屋(横浜市)
- 日替わりメニューで余剰食材活用
- お通しの量を30%削減
- 持ち帰り容器を無料提供
効果:
- 食品ロス率:8.5% → 3.2%
- 顧客満足度の向上
- SNSでの好評価が増加
今後の動き
罰則規定の可能性
欧州では食品廃棄に罰則を科す国も。日本でも議論が始まっています。
テクノロジーの進化
- 賞味期限管理の自動化
- ブロックチェーンでの流通管理
- ロボットによる適量盛り付け
まずはできることから始めましょう。小さな取り組みの積み重ねが、大きなコスト削減とブランド価値向上につながります。
参考:農林水産省「食品ロス削減推進法」、環境省「食品ロス削減施策」




