取材・文:EatMedia編集部
農林水産省が12月14日に発表した食品価格動向調査によると、2024年12月の業務用食材価格指数は前年同月比で 112.8% となり、高止まりが続いています。
主要食材の価格推移
2024年12月時点での業務用食材の価格(前年同月比)は以下の通りです。
値上がり率ランキング
| 食材カテゴリ | 前年同月比 | 主な要因 |
|---|---|---|
| 油脂類 | 118.5% | 原油価格高騰、円安 |
| 小麦粉 | 115.2% | ウクライナ情勢、円安 |
| 鶏卵 | 132.1% | 鳥インフルエンザ |
| 乳製品 | 111.8% | 飼料価格高騰 |
| 砂糖 | 108.3% | 原料不足 |
| 牛肉 | 106.5% | 飼料価格高騰 |
| 豚肉 | 104.2% | 同上 |
| 野菜類 | 103.7% | 天候不順 |
特に深刻な鶏卵不足
鳥インフルエンザの影響で、鶏卵価格が過去最高水準に達しています。
M玉1kg(業務用)の価格推移
| 時期 | 価格 |
|---|---|
| 2023年12月 | 180円 |
| 2024年6月 | 220円 |
| 2024年12月 | 238円 |
洋菓子店、オムライス専門店などは大打撃
「卵の使用量を減らすことはできない。利益がほとんど出ない状態が続いている」(都内オムライス専門店オーナー)
小麦粉価格も高止まり
製粉大手3社(日清製粉、日本製粉、昭和産業)は、2025年1月出荷分から業務用小麦粉を約8%値上げすると発表しました。
パン・麺類への影響
| 業態 | 影響度 | 主な対応策 |
|---|---|---|
| ベーカリー | 大 | パンの小型化、値上げ |
| ラーメン店 | 大 | 値上げ、麺の量削減 |
| パスタ店 | 中 | 値上げ、サイドメニュー強化 |
| 居酒屋 | 小 | 揚げ物メニューの見直し |
油脂類の高騰でフライヤー停止も
揚げ物に使う業務用油の価格が18.5%上昇しています。
16.5kg缶(業務用)の価格:
- 2023年12月:3,200円
- 2024年12月:3,792円
対応策の事例
- 揚げ物メニューの削減 - メニュー数を3割削減
- オイルポットの導入 - 油の再利用率を向上
- ノンフライヤーへの転換 - 油を使わない調理法に変更
「揚げ物は人気メニューだったが、原価率が50%を超えてしまい、廃止せざるを得なかった」(埼玉県・定食屋オーナー)
飲食店の原価率が悪化
食材価格の高騰により、飲食店の平均原価率(Food Cost)が上昇しています。
業態別の原価率推移
| 業態 | 2023年 | 2024年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ファミレス | 28.5% | 31.2% | +2.7pt |
| 居酒屋 | 32.1% | 35.4% | +3.3pt |
| ラーメン | 30.8% | 34.1% | +3.3pt |
| イタリアン | 29.2% | 31.8% | +2.6pt |
原価率35%超は危険水域
通常、飲食店の適正な原価率は30%前後とされています。35%を超えると、人件費や家賃を差し引くと利益がほとんど残りません。
企業の対応策
食材高騰に対し、飲食企業は以下の対策を講じています。
1. メニュー価格の改定
2024年に値上げを実施した主な企業:
- マクドナルド:主力商品を平均30円値上げ(7月)
- すき家:牛丼並盛を400円→420円に(9月)
- サイゼリヤ:約40品目を平均5%値上げ(10月)
- 日高屋:ラーメン390円→430円に(11月)
2. メニュー構成の見直し
原価率の高いメニューを削減し、利益率の高いメニューを強化。
具体例:
- アルコールメニューの強化(原価率20〜30%)
- サイドメニューの充実(原価率25〜35%)
- 高単価コースの新設
3. 仕入れ先の見直し
複数の仕入れ先を比較し、最安値で調達。
- 相見積もりの徹底 - 3社以上から見積もり取得
- 産地直送の活用 - 中間マージンを削減
- 共同購入 - 複数店舗で大量仕入れ
4. 食材ロスの削減
廃棄を減らし、原価率を改善。
- 在庫管理の徹底 - 発注精度を向上
- 日替わりメニューの活用 - 余剰食材を有効活用
- ポーションコントロール - 盛り付け量を標準化
今後の見通し
日本総合研究所の試算では、2025年の食材価格は前年比3〜5%の上昇が予測されています。
価格上昇が続く要因
- 円安の継続 - 1ドル=145〜150円で推移見込み
- 原油価格の高止まり - 中東情勢の不安定化
- 異常気象 - 世界的な農作物の不作
- エネルギーコスト - 光熱費の上昇が食品製造コストに波及
今からできる対策
食材高騰に対応するため、今からできる対策をご紹介します。
原価管理の徹底
- メニュー別原価率の把握 - 各メニューの原価を毎月計算
- ABC分析 - 売上・利益への貢献度でメニューを分類
- デッドメニューの排除 - 原価率が高く売れないメニューを削除
メニュー開発の工夫
- 代替食材の活用 - 高騰している食材を別の食材に変更
- 一物全体 - 食材を余すところなく使い切る
- 季節メニューの導入 - 旬の食材は安く仕入れられる
価格改定の準備
- 段階的な値上げ - 一度に大幅値上げせず、小刻みに実施
- 価値の見える化 - 食材の品質や産地をアピール
- セットメニューの工夫 - 単品よりお得感のあるセットで客単価アップ
補助金・支援制度
食材高騰への対応には、以下の支援制度が活用できます。
原油価格・物価高騰等総合緊急対策
対象: 中小飲食店
内容:
- 省エネ設備導入への補助(最大200万円)
- 経営改善コンサルティング費用の補助
セーフティネット保証4号
対象: 売上が前年同月比20%以上減少した事業者
内容:
- 融資の信用保証枠を拡大
- 保証料率を0.8%から0.2%に引き下げ
まとめ
食材価格の高騰は、飲食店経営にとって最大の課題の一つです。
価格転嫁だけでなく、メニュー構成の見直し、食材ロスの削減、仕入れ先の最適化など、多角的なアプローチで乗り切る必要があります。
参考:農林水産省「食品価格動向調査」、日本フードサービス協会資料をもとに編集部作成




